我が国では急速な少子高齢化が進行しており、高齢者の活用と生涯現役社会の実現が重要な課題となっています。そこで政府は企業の取り組みを支援するため、65歳超雇用推進助成金制度を設けています。本ブログではこの助成金制度について、その概要から申請方法、支給額の計算方法まで、詳しく解説していきます。
1. 65歳超雇用推進助成金とは?
高齢者の活用と生涯現役社会の実現
少子高齢化が進む中、企業には高齢者の積極的な活用が求められています。そこで、政府は2016年に「65歳超雇用推進助成金」を創設しました。この助成金は、定年引上げや定年制の廃止、高齢者の雇用管理制度の整備などに取り組む事業主を支援するものです。これにより、高齢者の意欲と能力を活かし、生涯現役社会の実現を後押ししています。
65歳超雇用推進助成金の目的
- 高年齢者の雇用の推進を図ること
- 高齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現すること
3つのコースと支援内容
65歳超雇用推進助成金には以下の3つのコースがあります。
- 65歳超継続雇用促進コース
– 65歳以上への定年引上げ、定年制の廃止、66歳以上の継続雇用制度の導入など、高齢者の雇用環境改善に取り組む事業主に対して助成 - 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
– 高齢者の雇用管理制度の整備に要した経費の一部を助成 - 高年齢者無期雇用転換コース
– 50歳以上かつ定年未満の有期契約労働者を無期雇用に転換した場合に助成
それぞれのコースには支給要件や支給額が設定されており、事業主の取り組み内容に応じて活用できます。特に「65歳超継続雇用促進コース」は、高齢者雇用に積極的に取り組む事業主に対する重要な支援策といえるでしょう。
2. 助成金の概要と対象事業主
高齢者雇用助成金の種類
高齢者雇用助成金には以下の2つのタイプがあります:
- 雇用関係助成金
– 雇用維持や再就職支援、新規雇入れに関わる助成金です。 - 労働条件等関係助成金
– 生産性向上や最低賃金引き上げ支援、労働時間設定改善支援、産業保健活動支援などの助成金です。
この中には、65歳以上への定年引き上げや高年齢者の雇用管理制度整備、高年齢有期契約労働者の無期雇用転換などを対象とした助成金も含まれています。
「高齢者」とは何歳以上を指すのか
- 高年齢者雇用安定法では55歳以上、中高年齢者は45歳以上と定義されています。
- しかし、高齢者雇用助成金の対象は主に60歳以上の高齢者が中心となっています。
助成金の受給要件
雇用関係助成金の受給対象となる事業主は以下の要件を満たす必要があります:
- 雇用保険適用事業所の事業主
- 期間内に申請を行う事業主
- 支給審査に協力する事業主
また、支給審査には以下の対応が求められます:
- 必要書類の整備・保管
- 書類提出や実地調査への協力
助成金の申請期間は、原則申請可能となった日から2ヶ月以内です。
生産性の要件と事業性評価
- 助成金の支給には、一定の生産性向上が必要とされています。
- 生産性要件を満たすには、直近会計年度の生産性が3年前に比べて6%以上増加、もしくは1%以上(6%未満)増加している必要があります。
- 後者の場合は金融機関による「事業性評価」を得る必要があります。
中小企業の範囲
- 雇用関係助成金の中には、中小企業と大企業で助成額が異なるものがあります。
- 「中小企業」の基準は、業種ごとに従業員数や資本金の上限が定められています。
高齢者雇用助成金の受給には様々な要件が設けられており、申請時は慎重な準備が必要不可欠です。
3. 申請の流れと必要書類
申請の流れ
65歳超雇用推進助成金の申請には以下のような流れがあります。
- 書類の準備: 申請に必要な書類を用意します。必要書類は後述します。
- 申請期間の確認: 各コースの申請期間が異なるため、期間を確認しましょう。
- 申請先の確認: 申請先は独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構の各都道府県支部です。
- 申請の提出: 必要書類を取り揃え、支部に申請を行います。
– 原則郵送での提出となりますが、持参可能な支部もあるので事前に確認しましょう。
必要書類
申請には以下の書類が必要となります。
- 支給申請書: 「継続様式第2号(1)」
- 定年及び継続雇用に係る規定等について: 「継続様式第2号(2)」
- 対象被保険者一覧: 「継続様式第2号(3)」
- 高年齢者の雇用管理に関する措置内容: 「継続様式第2号(4)」
- 記載事項補正・補足票: 「継続様式第2号別紙」
- 旧就業規則に関する申立書: 「継続様式第2号補助様式1」
- 雇用保険適用事業所等一覧表: 「継続様式第2号補助様式2」
- 支給要件確認申立書: 「共通要領第1号」
事業主の状況に応じて追加書類が必要となる場合があるので、詳細は支部に確認しましょう。
申請期間
65歳超継続雇用促進コースの申請期間は、定年引上げ等の制度実施月の翌月から4か月以内です。
例えば2023年12月から2024年3月に制度を実施した場合、2024年4月以降も申請可能ですが、2024年4月以降は2024年度の制度が適用されるので注意が必要です。
注意点
65歳超雇用推進助成金の申請には以下の点に注意が必要です。
- 申請先は労働局やハローワークではなく、独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構の各都道府県支部です。
- 各コースの申請期間を確認し、期限に間に合うよう申請を行う必要があります。
- 書類作成には十分な注意が必要で、支部の対応は厳しい可能性があります。
- 予算上限に達した場合、申請受付が停止される可能性があるため、早めの申請が重要です。
以上のように、65歳超雇用推進助成金の申請には細かな注意点があります。支給要件を十分に確認し、適切な書類準備が重要です。
4. 助成金の支給額と計算方法
特定求職者雇用開発助成金の支給額
特定求職者雇用開発助成金には「特定就職困難者コース」と「生涯現役コース」の2つのコースがあります。
「特定就職困難者コース」の支給額は以下の通りです:
– 高年齢者(60歳~64歳)、母子家庭の母等: 中小企業は60万円、中小企業以外は50万円。短時間労働者は40万円(中小企業以外は30万円)
– 身体・知的障害者(重度以外): 中小企業は120万円、中小企業以外は50万円。短時間労働者は80万円(中小企業以外は30万円)
– 身体・知的障害者(重度または45歳以上)、精神障害者: 中小企業は240万円、中小企業以外は30万円。短時間労働者は80万円(中小企業以外は30万円)
「生涯現役コース」の支給額は以下の通りです:
– 中小企業は70万円、中小企業以外は60万円
– 短時間労働者は50万円(中小企業以外は40万円)
65歳超雇用推進助成金の支給額
65歳超雇用推進助成金には以下のような3つのコースがあります。
「65歳超継続雇用促進コース」の支給額は次の通りです:
– 65歳への定年引き上げ: 15~30万円
– 66歳~69歳への定年引き上げ: 20~105万円
– 70歳未満から70歳以上への定年引き上げ: 30~105万円
– 定年(70歳未満に限る)の定めの廃止: 40~160万円
– 66~69歳の継続雇用制度の導入: 15~60万円
– 70歳未満から70歳以上への継続雇用制度の導入: 30~100万円
– 他社による継続雇用制度の導入: 66~69歳は10万円、70歳以上は15万円
「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」の支給額は次の通りです:
– 支給対象経費の60%(生産性要件を満たすと75%)。中小企業以外は45%(生産性要件を満たすと60%)
– 支給上限は50万円の実費
「高年齢者無期雇用転換コース」の支給額は次の通りです:
– 1人あたり48万円(中小企業以外は38万円)
– 生産性要件を満たした場合は60万円(中小企業以外は48万円)
高年齢労働者処遇改善促進助成金の支給額
この助成金の支給額は以下の式で算出されます:
– 令和4年度: (A – B) × 4/5 (中小企業以外は2/3)
– 令和5年度または6年度: (A – B) × 2/3 (中小企業以外は1/2)
ここで、
– A: 賃金増額後6ヶ月の増額前の賃金額に基づく高年齢雇用継続基本給付金の総額
– B: 賃金増額後の高年齢雇用継続給付金の総額
5. 申請の際の注意点
申請先は労働局・ハローワークではない
この助成金の申請窓口は、各都道府県にある独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構の地方支部となっています。雇用関連助成金の多くとは異なる申請先に注意が必要です。
申請受付期間の確認が重要
この助成金には申請期限が設定されているため、期限内に申請を行うことが重要です。例えば65歳超継続雇用促進コースの場合、制度の実施月の翌月から4ヶ月以内に申請する必要があります。特に郵送での申請の場合は、期限内に書類が到着するよう気をつける必要があります。
早めの申請がおすすめ
- 助成金は国の予算に依存しており、予算上限を超えると申請受付が停止されることがあります。
- 過去には9月24日で申請受付が締め切られるなど、短期間での打ち切りも見られます。
- この助成金は地方支部が窓口のため、不備への対応がより厳しいといわれています。
- そのため、早めに申請を行い、不備がないかしっかり確認することが重要です。
必要書類の整備と就業規則の見直し
- 審査に必要な出勤簿や賃金台帳、雇用契約書などの書類を整備し、いつでも提出できる状態にしておく
- 就業規則の改定を行う際は、労働組合や従業員代表と十分に協議する
- 労働関連法への違反がないか確認し、問題があれば早期に対処する
不支給となる場合
次のような場合には不支給となるので注意が必要です。
– 過去5年以内に助成金の不正受給があった
– 対象労働者の雇入れ年度以前に労働保険料の滞納がある
– 性風俗関連や接待を伴う飲食店の営業に関わっている
– 事業主や役員に暴力団との関わりがある
助成金の申請にはこのように様々な注意点があるため、申請前にしっかりとチェックする必要があります。申請に際しては、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
65歳超雇用推進助成金は、高齢者の雇用促進と生涯現役社会の実現に向けた重要な支援策です。事業主には定年引上げや高齢者の雇用管理制度整備など、さまざまな取り組みが求められますが、この助成金によって経済的な負担が軽減されます。申請にあたっては、対象要件や必要書類、申請期限など、細かな注意点に気をつける必要があります。また、不正受給のリスクにも留意し、適切な手続きを踏むことが重要です。高齢者の活躍を後押しする本助成金を積極的に活用し、企業の生産性向上と高齢者の雇用促進につなげましょう。
よくある質問
65歳超雇用推進助成金の目的は何ですか?
高年齢者の雇用の推進と、高齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会の実現を目的としています。
助成金の受給には何か条件がありますか?
雇用保険適用事業所の事業主で、期間内に申請を行い、支給審査に協力する必要があります。また、一定の生産性向上や事業性評価を満たす必要があります。
申請にはどのような書類が必要ですか?
支給申請書や定年・継続雇用に関する規定、対象被保険者一覧、雇用管理措置内容などの書類が必要です。事業主の状況に応じて追加書類を求められる場合もあります。
助成金の支給額はどのように決まりますか?
コースによって異なりますが、高年齢者の雇用環境改善の取り組み内容に応じて、一定の基準に基づき支給額が決定されます。
出典元:65歳超雇用推進助成金 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
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