日本政府は中小企業の働き方改革を後押しするため、「働き方改革推進支援助成金」という助成金制度を設けています。この制度を活用することで、経営資源に限りのある中小企業でも、働き方改革に取り組む際の費用の一部を補助してもらえます。本ブログではこの助成金制度の概要や対象要件、支給額の算定方法などを詳しく解説しています。働き方改革に取り組もうとしている中小企業経営者の皆さまにとって、有益な情報となることでしょう。
働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金は、中小企業・小規模事業者が働き方改革に取り組む際に助成される制度です。この制度は、労働時間改善、年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバルやテレワークの導入促進を目的としています。
助成金は取り組みにかかる費用の一部を助成する形で支給されます。この制度は中小企業や個人事業主も利用することができます。具体的には、従業員が20人以下の事業所が対象です。
申請要件と注意事項
申請する際には、自社が中小企業の定義や業種、対象事業主などを確認する必要があります。自社が中小企業の条件を満たしているかどうか念入りにチェックしましょう。
取り組むべきコースと目標
助成金は複数のコースがあり、自社の目標や取り組みに応じて適用するコースを選択する必要があります。自社の状況に合わせて申請を行うことが重要です。
外部リソースの活用
目標達成のためには、社会保険労務士やコンサルティング会社などの外部リソースの活用が効果的です。専門家のアドバイスや支援を受けることで、取り組みをより効果的に進めることができます。
働き方改革推進支援助成金を活用することは、働き方改革を推進するために重要な手段です。助成金を受けることで、限られた経営資源でも効果的に働き方改革を実現することができます。助成金を利用して、労働環境の改善や従業員のワークライフバランスの向上を目指しましょう。
労働時間適正管理推進コースの概要
労働時間適正管理推進コースは、中小事業主の労働時間と労務管理を適正にするための支援プログラムです。
対象事業主
このコースの対象は、以下の条件を満たす中小事業主です。
– 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
– 全ての事業場で、労働時間管理と賃金計算を統合管理ITシステムで行っていないこと。
– 全ての事業場で、労務管理書類を5年間保存する義務が就業規則に明記されていないこと。
– 全ての事業場で、36協定が締結・届出されていること。
– 交付申請時点で、年5日の有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。
対象取組
このコースでは、以下の取り組みが対象となります:
1. 労務管理担当者への研修
2. 労働者への研修・周知・啓発
3. 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
4. 就業規則や労使協定の作成・変更
5. 人材確保に向けた取り組み
6. 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7. 労務管理用機器の導入・更新
8. デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9. 労働能率の向上に貢献する設備・機器の導入・更新(例:小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
成果目標
このコースの目標は、以下の3つの成果を達成することです:
1. 全ての事業場で、労働時間をリンクさせた賃金台帳を統合管理ITシステムで作成・管理・保存すること。
2. 全ての事業場で、労務管理書類を5年間保存することを就業規則に明記すること。
3. 労働時間を正確に把握し、適切に管理するために労働時間の実態を把握すること。
労働時間適正管理推進コースでは、労働時間の適正な管理を通じて、生産性向上や労働環境の改善を図る中小事業主が支援されます。助成額は、成果目標の達成度や設備・機器の導入・更新などに応じて決定されます。労働時間の適正管理は、企業の組織づくりにおいて重要な要素であり、労働者の健康と働きやすさを実現するための取り組みです。
支給対象となる事業主の要件
働き方改革推進支援助成金の支給対象となる事業主には、以下の要件があります。
資本または出資額:小売業、サービス業、卸売業、その他の業種
以下の条件を満たす場合、支給対象となります。
- 小売業(飲食店を含む):資本または出資額が5,000万円以下、または常時使用する労働者数が50人以下
- サービス業:資本または出資額が5,000万円以下、または常時使用する労働者数が100人以下
- 卸売業:資本または出資額が1億円以下、または常時使用する労働者数が100人以下
- その他の業種:資本または出資額が3億円以下、または常時使用する労働者数が300人以下
医業に従事する医師が勤務する病院や診療所、介護老人保健施設、介護医療院については、常時使用する労働者数が300人以下の場合は中小企業事業主に該当します。
その他の要件
以下の条件も満たす必要があります。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
- 全ての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していないこと。
- 全ての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することが就業規則等に規定されていないこと。
- 全ての対象事業場において、交付申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
- 全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。
上記の要件を満たす中小企業事業主が働き方改革推進支援助成金の支給対象となります。
成果目標と支給額
成果目標の設定と支給額について詳しく説明します。
成果目標の設定
労働時間適正管理推進コースでは、以下の成果目標を達成する必要があります:
- 統合管理ITシステムの導入:全ての対象事業場において、労働時間管理と賃金計算をリンクさせ、賃金台帳を作成・管理・保存するための統合管理ITシステムを導入すること。
- 労務管理書類の保存期間の延長:全ての対象事業場において、賃金台帳などの労務管理書類を就業規則などで5年間保存することを規定すること。
- 労働時間研修の実施:全ての対象事業場において、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づく労働時間研修を労働者および労務管理担当者に対して実施すること。
さらに、上記の成果目標に加えて、対象事業場で指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げることも成果目標に含めることができます。
支給額
助成金の支給額は、以下の2つの要素によって決定されます:
-
成果目標の達成状況:成果目標1から3までの上限額と、対象経費の合計額×補助率3/4のいずれか低い方が支給されます。ただし、成果目標1を達成した場合は100万円、成果目標2または3を達成した場合は50万円が上限額となります。
-
賃上げ加算額:労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げた場合、引き上げ人数と引き上げ額に応じて加算額が支給されます。引き上げ人数が1~3人の場合は15万円、4~6人の場合は30万円、7~10人の場合は50万円、11人以上30人以下の場合は1人あたり5万円が加算されます(上限150万円)。引き上げ人数が5%以上の場合は、それぞれの加算額が24万円、48万円、80万円、1人あたり8万円となります(上限240万円)。
助成金の支給額は、事業主の成果目標の達成状況と賃上げの実施によって変動します。成果目標の達成度合いや賃上げの実施人数や額によって、助成金の額が決まります。
以上が成果目標の設定と支給額についての説明です。助成金の申請時には、成果目標の達成を目指し、労働者の賃上げにも取り組むことが重要です。
申請のポイント
申請の際には以下の3つのポイントに注意する必要があります。
事業内容が成果目標達成を目指す取組であること
助成金申請の際には、申請する事業内容が各コースで設定されている成果目標達成を目指す取組となっているかを確認する必要があります。成果目標に対する具体的な取組を明確にし、それに対する計画的な実行を行う必要があります。
助成申請されている経費が対象外ではないか
助成申請においては、申請されている経費が助成の対象外となるものではないかを確認する必要があります。助成金の対象となる経費には制約がありますので、申請前に十分な確認を行いましょう。
申請や報告が規定の期日・様式でなされているか
申請や報告書類は規定の期日・様式で提出する必要があります。期日を守って提出することは非常に重要です。また、様式も厳密に守り、必要事項を適切に記入することも大切です。申請や報告に関する規定をよく把握し、必要な手続きを適切に行いましょう。
申請の際にはこれらのポイントを念頭に置き、スムーズな申請を行うようにしましょう。助成金申請の成功には、事業内容の選定や経費の確認、申請や報告の適切な手続きなどが欠かせません。
まとめ
働き方改革推進支援助成金は、中小企業が働き方改革に取り組むための有効な支援制度です。特に、労働時間適正管理推進コースでは、労働時間管理の適正化や労務管理書類の保存、労働者への研修など、労働環境の改善に向けた具体的な取り組みが支援されます。申請にあたっては、成果目標の達成や申請手続きの正確性が重要です。制度の活用によって、企業の生産性向上や従業員の健康・ワークライフバランスの向上を目指すことができます。働き方改革を進めるうえで、この助成金を有効に活用しましょう。
よくある質問
働き方改革推進支援助成金の対象となる中小企業の定義は何ですか?
中小企業の定義は業種によって異なります。小売業や飲食店は従業員数50人以下または資本金5,000万円以下、サービス業は従業員数100人以下または資本金5,000万円以下、卸売業は従業員数100人以下または資本金1億円以下、その他の業種は従業員数300人以下または資本金3億円以下となっています。医療や介護の事業所については従業員数が300人以下の場合も中小企業に該当します。
労働時間適正管理推進コースの成果目標とはどのようなものですか?
このコースの成果目標は以下の3点です。1つ目は、全ての事業場で労働時間管理と賃金計算をリンクさせた統合管理ITシステムを導入すること。2つ目は、労務管理書類を就業規則等で5年間保存することを規定すること。3つ目は、労働者および労務管理担当者に対して労働時間研修を実施することです。さらに、対象労働者の時間給を3%以上引き上げることも成果目標に含められます。
助成金の支給額はどのように決まりますか?
支給額は2つの要素によって決まります。1つ目は上述の成果目標の達成状況です。成果目標を全て達成した場合は200万円が上限となります。2つ目は賃上げの実施状況です。対象労働者の時間給を3%以上引き上げた場合、引き上げ人数と引き上げ額に応じて最大150万円または240万円が加算されます。つまり、成果目標の達成と賃上げの実施が支給額の決定に大きく影響します。
申請の際の注意点はありますか?
申請の際の主な注意点は以下の3点です。1つ目は、申請する事業内容が成果目標の達成を目指す取組であることを確認することです。2つ目は、申請経費が助成対象外とならないよう確認することです。3つ目は、申請や報告の期日や様式を守ることです。これらのポイントを意識して申請を行うことが重要です。
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